【みなと哲学サロン:初級】『読書について』ショーペンハウアー、ご参加いただいた皆様ありがとうございました!
満席につきご参加いただけなかった皆様も、次回は是非よろしくおねがいします!
講師の堤田泰成さんの発言を一部抜粋↓
ショーペンハウアーの「読書について」は一見したところ平易な非哲学的エッセイですが、注意深く読んでみるとそこにも彼の哲学の基本的立場・態度がはっきりと表明されています。それは抽象的・概念的認識に対する具体的・直観的認識の優位です。私たちは少なくとも読書のために現実の世界から目を逸らすようなことがあってはならず、思索の材料を常に具体的な対象から引き出してくるべきなのです。読書はあくまでもそれが困難なときの場合の謂わば「次善の策」にすぎません。なので、ショーペンハウアーは多読によって抽象的・概念的な知識だけをむやみやたらに増やすことを厳しく戒めています。読書によって得られた抽象的・概念的な知識(もともとそれ自体も現実の対象に由来しています)は、常に具体的・直観的な世界に結び付けられ再びそこへと還元されるべきであり、その作業を行うためには自分の頭で考えること(=反省)が必要となります。本をただ漫然と読むだけの受動的読書ではなく、自ら思索しながらテキストと向き合う能動的読書へ。ショーペンハウアーの「読書について」は私たちにそうした読書態度の転換を説得力のある力強い言葉でもって促しているのです。
(伊勢)